孤独な花と孤高の王子





…院長室をあとにした私は、病室に戻ることなく中庭のベンチに腰をかけていた。


今義父の顔を見たら泣いてしまう。
病状を知りたくないという義父の気持ちを無視して、真実を言ってしまいそうになる。



「三か月…」


そうつぶやいた瞬間、背後に人の気配がした。



「いつまでたっても戻らないから探しに来た。もう面会時間終わりだってさ」


私の前に立ち、私のバッグを突き出してくる篠宮さん。
その姿を見た瞬間、身体の奥から何かがこみ上げてきた。





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