東の神殿と歌姫
再び辻馬車に揺られ、小さな宿場に泊まり
そうして10日後、漸く王都シャスに辿り着いた
フィルイが自国を出てから既に二ヶ月近く
肌寒かった春先から、季節はもう夏日も増えて
この南の国にぴったりな時期になっていた
シャスに着いて、割合に長く旅の伴をさせてもらった、神官と見習いのリグセロに別れを告げ、都の中をふらりと歩いてみる
―― 凄い浮かれっぷりだ…
思わず頭を抱えたくなる位、皆が浮き足立っている
婚約祝いの事があるにしたって、こんなにフワッフワしてて大丈夫なのか?!
と、心配になる
国土も資源も豊かで、なのに警戒心が薄い
海の国ミレイア
実は色々狙われている。と聞いた事のあるフィルイは落ち着かないが
(衛兵は忠誠心が高いと聞いた。…ならば大丈夫なのかもしれない)
取り敢えず食事でも
そう思って賑やかな店に入る
「お姉さん、相席で」
そう店の者に促され座った席に
旅芸人のキゼナ一座の者達がいた