HOPE
 辺りは見渡す限りの田園が広がっていて、その間に一本の舗装された道がある。
「本当に田舎だな」
 驚いている僕を見て、宮久保はクスクスと笑う。
「こんな田舎は初めて?」
「うん、そうかも」
コンクリートで舗装された一本道を二人で歩く。
 真夏の日差しは、僕達を明るく照らし出していた。
 時折、地元のケートラが通るくらいで、他には何もいなかった。
 ただ聞こえてくるのは、蝉の鳴き声や風の音だけ。
 しばらく歩いた所に村があった。
 藁で作られた屋根のある家々が連なり、一つの村を作りだしていた。
 いや、こういうのは村と言うよりは、集落と言うのかもしれない。
「なあ、ここに何かあるのか?」
「まだ先だよ」
 そう言って、宮久保は再び歩き出す。


 村を抜けた所に西洋風の大きな屋敷があった。
 見てすぐに、白というイメージを定着させる様な、真っ白な柵に囲まれた屋敷。
 大きな庭には、かつては芝生があったのだろう。
 今は雑草がボウボウに茂っている。
「ここだよ」
 宮久保は、そう言った。
「え?」
「ここが目的地」
 ここは、どう見ても空家だった。
 以前に、どこかの金持ちでも住んでいたのだろうか。
「ここって……」
 彼女の表情に影が差し込む。
「昔、私が住んでた家」
「こんな凄い所に……。どうして?」
「とりあえず、中に入ろう」
 ポケットから鍵を取り出し、門の鍵を開けた。
「昔、合鍵を貰った事があって、そのまま持ってたの」
 屋敷に入ると、高い天井や所々の大きな扉が目に着いた。
 驚いている僕を余所に、宮久保は語りだす。
「私は、父さんの不倫相手との間にできた子供だったの」
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