HOPE
Epilogue Day dream
 部屋の中に、目覚まし時計の音が鳴り響く。
「う、うぅん」
 寝起きの体を起こして、時計を見る。
 時間は既に、八時を回っていた。
「やばい! 遅刻だ!」
 慌てて、パジャマから制服に着替え、階段を駆け降りた。
 リビングには、朝刊を読みながらトーストを口に銜えている父さんがいる。
「ちょっと、あなた! お行儀が悪いわよ。食事中に新聞なんて」
 キッチンから、母さんの注意の声が聞こえる。
「ああ、悪い」
 父さんは慌てて新聞紙を丸めた。
 いつもと同じ朝。
 なんだか、とても安心する。
 慌てて身支度をしている私に、母さんは煽てる様に言う。
「沙耶子。あなたの彼氏が外で待ってるわよ」
「え?」
「早く行ってあげなさい。このままじゃ、二人で遅刻しちゃうわよ」
 私は鞄を手に取り、玄関を飛び出した。
「おはよう」
 隼人君は自転車に跨って、私を待っていてくれていた。
「ありがとう。待っててくれて」
「どうって事ない。早く乗れよ。飛ばして行くから」
「うん!」


 夏の透き通った風を感じながら、通学路を走る。
 とても涼しくて気持ちが良い。
「おーい!」
 隼人君が誰かに手を振っている。
 道の先には綾人君がいた。
「おはよー! 綾人君!」
 綾人君は、ちらりとこちらを向き、格好良く右手を上げて合図をした。
「相変わらずクールだな。あいつは……」
「それが綾人君の良い所だよ。格好良いじゃん」
 隼人君は苦笑する。
「そうかなぁ。なんか、あいつ無駄にモテモテだし」
「大丈夫だよ。隼人君はモテモテじゃなくても、私がいるから!」
「お前がいてくれると、本当に安心するよ」
 そんな事はない。
 むしろ、安心するのは私の方だ。
 本当に、隼人君がいるだけで毎日が幸せだ。


< 150 / 151 >

この作品をシェア

pagetop