* 王子と契約彼女 *

優の気持ち





「てか、なんで優先輩と付き合ってるフリしてんの?」

「え‥」

「誰にも言わないって誓うから!教えて?‥」



帰り道、人通りのないと言っていいほど静かな道に来たとき、薫くんは私に聞いてきた。

けど、簡単に口にしちゃいけない気がして‥



「ごめん。教えられないや。」

「えー。そっか‥。」



薫くんはすごく悲しそうな顔をした。



「‥‥あ、私ここで曲がるからっ、じゃあね」

「待って。」



薫くんの手を離そうとしたけど、薫くんが握り返して呼び止める。



「一個だけいい?ななちゃんは、優先輩が好きなの?」



この質問なら、答えられるよ。



「うん。」



私は真剣な顔で答えた。



「そっか‥、」



薫くんはまた悲しそうな顔をして、握っていた手の力が少し弱まった。

薫くん、諦めてくれたかな‥?



ドンッ



「痛っ‥」



私の考えとは裏腹に、誰もいない道で薫くんは私を塀に強く押し倒し、身動きを取れなくした。



「(これは‥やばい‥‥?!)」



少女漫画でもみたことのある光景。
このまま行けば、キスされるだろう。

そしてこのときやっと

"隙ありすぎっ"

優くんの言葉が蘇った。



「俺はななちゃんが好きなんだよ」



そう言って薫くんは私に顔を近付ける。



「(やばい〜〜〜〜‥!優くん‥!)」



逃げられないこの状況に、私は優くんの名前を心の中で強く唱えた。




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