僕のスケープゴート
「主様!主様!…。マナト!」






ハッと目を覚ますと、私の手を握り心配そうな顔をしたナミがいた。
私の爪には血がついている。
私は自分の体を傷つけていた。






ナミはその血だらけの手を握っていた。






「ナミ…。」





「主様…。じっとして。」





傷が…。綺麗になくなった。治る。
「!」






「主様は…。目が見えるのですか。」






「見えてはいないが…。感じる。何となく見えていると言ったらいいかな。頭に流れてくるんだ。」





ナミは黙ってしまった。




「ナミ?」





「主様の目も治せたらいいのに…。」
そっと瞼に触れて…。ナミは泣いていた。





「私のために泣くことはない…。ありがとう。」




遠い昔に母が泣いていたことを思い出した。
遠い遠い昔…。





その雨は止まず…。
作物に影響を及ぼした。




村人の不安の矛先は祠に向かう…。





そして見てしまう。






山の中で木の実を集めている娘を。
生け贄が生きている…。





そうして…。山狩りが始まった。
何も知らない娘は主の為に木の実を集めている。




がさがさ!





娘は振り返る。
「何故生け贄がここにいる?!」





木の実が転がり。娘は走った。





「いたぞ!」





ひたすら走る娘は祠に戻らなかった。
主の為に…。





山の奥…。と小さな湖まで逃げた。





祠の主は娘の帰りを待っていた。
何かが可笑しい。
人の気配がする。






盲目の主は煙の臭いを感じた。
娘を探しに祠から姿を現す。





「ナミ!」





研ぎ澄ました感覚で探し出す。





血の臭いと煙の臭いに気づいた。





がさがさ!





「おい!娘を見なかったか?!」





「…。」





手には鎌を構え村人が叫んだ。





ざわざわと風が吹き抜け、祠の主は…。





「ぎゃああああ!」






我を忘れた。






村人の松明は湖を照らし、綺麗な湖を赤く染めた。





悲鳴が響き渡る。






娘は追い詰められ
「主様…。」





湖に身を投げようとした。





風が吹き抜け村人が倒れた。





ズシンズシン…。





「あぁぁぁぁぁ!」






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