灼炎騎士フレイマー
燎の体を包んでいた炎は、まるで生き物のようにうねりながら燎から離れ、一瞬で今度は、怪物を飲み込んだ。

「うぎゃおおぉぉ!!」

炎上する怪物。
灰になり、崩れて行く。
全てが灰に変わった時、炎は消えた。

燎は脱力し、膝から倒れた。
だが不思議な事に、燎には火傷どころか、高熱に晒された痕跡が、一切見当たらなかった。直ぐに精密検査も受けたが、結果は変わらなかった。
医者の見解は、
「まぁ、極度のストレスと疲労が蓄積して、一気に出たんでしょう。炎?人体発火ですか…。しかしそんな事が本当にあったなら、今頃彼は全身焼け爛れ、良くても生死不明の筈です。脈も血圧も羨ましくなる位の正常値です。見間違い…錯覚でしょう。」
「はぁ…」
兵藤は、それ以上は何も訊かなかった。
そして、燎は念のため一晩だけ入院する事になった。兵藤は、明日の迎え時間を確認し、病院を後にした。


目覚めると、燎は手術台の上にいた。全身麻酔がかけられ、体がピクリとも動かせない。
(一体これは!?)
ふと、横に立っている人影に気づいた。
「気が付いたようだな。」医者とおぼしき白衣の初老の男性。髪はオールバック。全体的に細身だ。 不敵な笑みを浮かべ、手にはメスが握られている。
「何をするつもりだ…」
「愚問を。手術台の上に寝ていて麻酔がかけられているなら、答えは一つだろう。」
「何だと…お前一人でか?そんな手術は有り得ない!!」
「知らんな。」
白衣の男のメスが、ライトの光で鈍く光った。
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