【完】ラブ☆パワー全開



「まじで?」

「……まじで」

「明日着る予定だったのにぃっ!」



この世の終わり、
そんな表情をして叫んだ。



この間、出会った人に何とかデートまで持ち込んだらしい千恵。

かなりのお金持ちらしく、
今回に賭けてる!
と毎回のように言う、そのデートが明日らしく。

前にあたしが買ったワンピが、
絶対にその人の好みだから貸して欲しいと頼まれ。



……完全に忘れてた、あたし。



「私の結婚を邪魔する気なのね?」



え、デートだよね。

何でもう結婚することになってんのよ。



「あぁ、もう駄目だ。プロポーズしてもらえないよー」


……初めてのデートだよね。

それでいきなりプロポーズって。



「あー、もう!
ごめんって!
今日、家に持って行くから。
それなら問題ないっしょ?」



涙目で睨む千恵に溜息まじりに言うと、パッと笑顔に変わり。



「いーの?」

「忘れたのはあたしだしね。
あ、でも仁とのデート終わってからでいい?」

「うんっ!」



我ながら良い考え。

千恵も満足そうに鼻歌なんて歌ってるし。



って、時間!
急がなきゃ。



「じゃあ後で行くからね!」


そう言って走って会社を出た。



< 130 / 370 >

この作品をシェア

pagetop