約束【短編】
でも、羽織を持った拓哉なんていないし
足音どころか気配もしない
『綺麗だね。』
「!」
慌てて自分の隣を見るけれど、
当然のように誰もいない
一瞬だけ見えた拓哉の横顔もそぐに
消えた
サァァ、と夜風が吹いて私の体から
体温を奪っていく
いくら4月とはいえ、夜になれば
肌寒い
来るはずもない拓哉を待つのは
諦めて、私はふらふら立ち上がった
お風呂に入って、朝食の仕込みをして
のろのろと寝室に向かう