ゆびきり
九章 恐怖
ある日、リースに来てみると、真斗の姿はなく、倫子だけがいた。








「あれ?倫子だけなんて、珍しいね」








私は中に入り、いつも通り、カウンターに座った。








「真斗が今日はバイトラストみたいだから、こないのよ」








「ふぅん、珍しいね」








女二人っていうのも、意外に初めてかもしれない。








「この間ね、梨由と話してきたの…」








この話しは、詠士にはしていない。








自分の醜い部分を知られたくないから…








私が静かに話すと、倫子は手を止め私の話しに耳を傾けてくれる。








「私って、本当に嫌な女だよね…。梨由の気持ちも、詠士の気持ちも言われなくても、本当は気づいているのに…」








倫子に話しながら、梨由の悲しい顔が脳裏に浮かんできた。








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