ゆびきり
五章 とらないで
詠士と一緒に住み始めて数日たったある日、同僚から最近声をかけられる。








「高嶋さん、最近生き生きしてるわね。なにかいいことあった?」







いいことか、心当たりは一つしかない。







「そうですか?いつも通りですよ?」








多くは語れない。聞かれたくもない。








「そお?恋してたりして?」







そんな会話を何気なくしているが、内心嬉しかった。







好きな人と同じ家に住むなんて、初めてのことだ。







あの日以来、テレビの音楽番組をさけているし、会話もいつも楽しくて、心地いい。








不思議だね。







心なんてなくても、好きな人の側に居られるだけで満足だよ。







そんな考えをしてしまう自分の滑稽さもわかっている。








だけど、今の私は、現在だけを見ていたい。








未来は考えたくない。








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