明治屋クラムジー
 

翌朝八重は、ミツに連れられて前園家へ訪問した。
初めて会った前園利彦は、上品な顔立ちをした厳格な男だった。
 

ただの西洋カブレではなく、それらしくあか抜けた男である。
気品がある。
 

 
「八重さん、ですね。あぁ、やはり素敵な女性だ」
 

「……滅相もございません」
 

「突発的な縁談にさぞ驚かれたことでしょう。わざわざ御足労頂いて感謝します」
 

 
ミツは始終そわそわとしていて、八重の隣りで落ち着きがなかった。
八重は酷く冷静でいた。
知らない男と初めて話すことに緊張していたことも、今となれば何でもない。
 

ただ、利彦の品ある容貌を見る度に思い浮かべるのは弥一の、日に焼けた血色の良い肌だった。
 

この男が弥一ならば良いのに、ほぼ意識していない場所、心底で八重は絶えずそう思った。
 

 
「それでは八重殿、ミツ殿、婚儀の詳細でありますが」
 

 
既に前園家では前園家流の婚儀の段取りが、何から何まで用意されているらしい。
 

 
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