Strawberry[更新停止中]

曇り空

強く腕を引かれて、体ごと引っ張られながら歩く形になった。

先輩と歩幅が違いすぎて、小走りになってしまう。



駐車場に着いて、助手席のドアを開けてくれる。

運転席に先輩が乗り込んで、彼の横顔が見えた。





――――どうして、

そんなに苦しそうな顔してるの?



そんな顔、しないで。



胸がぎゅうっと締め付けられて苦しい。


彼の唇は、強く噛みすぎて真っ赤な血がにじんでいる。


つ、と流れ落ちた一筋の赤い雫は、彼の涙のようにも見えて。




――――泣かないで‥‥‥



雫を拭おうと、腕を伸ばし彼の唇にそっと指で触れた。



「――――ッ」



パシッと音がして、私の指が払われる。


払われた、行き場のない手がひりひり痛む。


一切の音を失った車内で、わたしはただ、呆然と赤くなった手を見ていた。




「‥‥‥‥ごめん」




彼が傷ついた、小さな子どものような顔をして、小さくつぶやく。



こみ上げてくる涙を振り払うように、私は小さく首を振った。


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