九弦堂のザッハトルテ


代金をもらい


ザッハトルテを手放す


美味しく食べられるのよー


我が子を売りに出すような喪失感


わたしはいつまでも見送った


冬美親子の背中を


ケーキを掲げて談笑し


その目には涙はなく


挙句にハイタッチをする親子


ケラケラと高らかな笑いの的は明らかに


わたし?


「ちょっと冬美ちゃーん‼」


遠くで振り向いた親子


「誕生日いつー?」


「12月20日‼」


アッ‼と舌を出したが遅いわ‼


わたしは猛然とダッシュ‼


逃げる親子


結局


疲れ切ってママチャリに戻りました…






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