帽子を取ったら…
帽子を取った!
 その志穂嬢…


 やっぱり、帽子は取ろうとはしなかった。


 するとである。


「気になる?」


 ジッ、輝人を見つめる志穂嬢。


「え?」


 輝人は撮影を中断し、カメラを下ろす。


「帽子の事、気になるんでしょう?」


「帽子?」


「ごめんなさいね。私っていつも、帽子を被ったままだから。
 輝人、気になって仕方ないよね?」


「俺は別に…」


 やばい…


 輝人はそう思い始めた。


 自分の不満を志穂嬢に感づかれたかもしれない。


 こりゃあ気まずい雰囲気になるかも。


 何だか不安になって来ちゃった。


「里奈が愚痴ってたよ。
 私は帽子を取らないから、輝人がスッゴく気にしているって」


 不安が増す輝人。


「俺はそんなに気にしてねーよ。 色々と、人に言えない事情が有るんだろう?」


「ちょっと来て」


「え?」


 志穂嬢はいきなり、輝人の手を引っ張って場所を移動し始めた。


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