心はいつも、貴方とともに
「何か御用でも?」


「いや、別段用はないんだが。
…暇そうに見えたからな。」



こっそりと、ランバートは囁く。



アミリアは目を見開いて、また視線で兄を咎めた。



「ダニエル、外せ。」



いい加減鬱陶しくなったのか、ランバートは小さく手を振った。



ランバートに長年仕えているダニエルは、もうそろそろ主人が自分を追い払うであろうことを予想していたのか、素直に後ろに下がっていった。



完全に人の姿が見えなくなってから、ランバートは不敵に微笑んで手すりに腕をついた。



「さすがに疲れるだろう、毎日ハープを爪弾くなんて。」


「えぇ、まぁ。
しかし、お兄様に心配していただくようなことではありません。」



お仕事は、と追及すると、出来のいい兄はもうすべて仕事を終わらせてきたらしい。



責めるところがなくなってしまったアミリアは口をつぐんだ。



そんなアミリアを面白そうに眺め、ランバートは提案する。



「もう、昼だ。
一緒に食事でも?」


「結構ですと断っても、連れて行くおつもりでしょう?」



呆れて言うと、ランバートは答えずに歩き出した。



ため息をついて、後ろを振り返り、ダニエルに合図する。



彼はもう白髪が混じり始めた老人だというのに、驚くほど俊敏にやってきた。



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