心はいつも、貴方とともに

famine








しばらく隊から離れている間に、世の中は大きく動いたらしい。



久し振りに休暇をもらい、城下町に出かけたジークの耳に飛び込んできたのは、不吉な話だった。



「飢饉?」


「あぁ。
なんでも、稲穂を虫が食っていくそうだ。」


「虫…。」



酒屋の主人は、困ったもんだと頭を掻く。



ジークは隣で酒を浴びるように飲んでいるラジャを振り返った。



「どう思う?」



上機嫌なラジャだったが、さすがに国を守る騎士らしく真剣な顔つきになった。



「どうってなぁ…。
害虫はどうしようもない。
ところで、その虫なんだが…。」



ラジャはジークのほうに身体を寄せ、声を落とした。



主人はさりげなく、遠ざかってくれる。



ラジャは喧騒に消えていくような小さな声で言った。



「どうも、敵国がわざとこの国に放したって噂だぜ。」


「なんだって。」



ジークは眉間に深い皺を刻んだ。



「そんなことって、あるのか?」


「わかんねぇぞ。
頭に血が昇ったお坊ちゃんは怖い怖い。」



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