痛いくらいの好きを君に。

ダメなんだよなー…。

千尋の言葉には、なんか逆らえない。



――――……チュッ。



私は触れるだけのキスをする。

千尋はフワリと笑い、「もう一回」と呟く。


別に千尋のことは好きじゃない。

いや、好きは好きだけど、loveではないのさ。

なのに、ダメなんだ。


やっぱり、どうしても…。

千尋の声と、その笑った顔が、私を駆り立てるの…。



今度のキスはさっきよりも長めのキス。

唇が離れた瞬間、変な寂しさがやってくる。


私は、その瞬間が好きじゃない。

なんか、寂しくて、切なくて、少し痛い…。



「奈子?」



私の顔を覗きこむ千尋。



「学校行くぞ」



そう言って、千尋は私の手をつかむ。

部屋を出て階段を降りていくと央志達が待っていて、「遅すぎる!」と私達を睨んだ。



「ちょっと朝の挨拶が終わんなくてさ」



ニヤっと笑う千尋。

その言葉に、二人の兄は「お前らなー」やら「盛んだねー」等と呟いていた。
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