モラトリアムを抱きしめて
「今日は泊めてあげる。 助けてもらったしね。 明日は帰るのよ」

チラッと少女を見ると、やっぱり真っ直ぐ私を見ていた。

「それから、怪我」

私が傷を指差すと少女は私の指を見て不思議そうな顔をしている。

「怪我の具合が悪くなったらすぐに病院に連れていくから、嘘ついたり我慢しないように」

だんだん口調が強くなる私を尻目に少女は顔をゆるめている。

「えっと、それから」

少女の毛先から雫がひとつ。ポタリと落ちて肩にかけたタオルに染みた。

絆創膏をベタっと少女のおでこに貼り、ニコッと笑った私に少女は同じ笑顔で応えてくれた。


「名前を教えてくれる?」


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