モラトリアムを抱きしめて
私だけが止まってしまったような世界の中で、より私を凍らせたのは電話越しの夫の声だった。

母が亡くなったこと、葬儀には来なくてもいいと伝えると、いつも優しい夫が珍しく怒ったような口調になったのだ。

そして先程、溜め息と一緒に電話をきられてしまった。

一瞬の出来事ですぐに理解することができなかった。

私はただ、結婚式でさえ来なかった母親の葬式に夫なんて呼べない、そう思っただけだ。

とうとう夫にまで愛想を尽かされてしまったかと思うと、余計に私の身体は動かなくなってしまう。

私の世界はモノクロに変わっていく――

いや、初めから色なんてなかったのかもしれない――



「――それにしても……ハジメ君遅いわね」


少ない親戚に電話をかけ終わった頃、呟くようにおばちゃんが言った。



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