サグラダ・ファミリア
「ソフィスティケイテッド」

生霊のシンが声を掛けると、
ヴァンパイアはけだるく顔を上げた。
狐の死と共に、
生霊たちがくっきりした。
疑問を口にする、心の余裕がなくて、
黙っていたが、
狐の死が生霊たちに、
力を与えたことは確かだ。

ヴァンパイアの目にも、
乗客の目にも、生霊たちは映っているらしい。
不思議で、切ない。

「君は俺に脅されて、
 ここまで来たんだ、
 狐のように、
 君も、
 消されてしまうのは、
 いけない」

シンの顔は青ざめていた。

「Sagen Sie einmal mehr…」

何と言ったのかはわからない、
厳しい声。
ヴァンパイアの顔は、
暗く怒りを帯びていた。

「僕らの身体は、
 今驚く程力に満ちてる・・・。
 狐は恐らく、僕らに力を注ぎ込む形で、
 消滅したんだね。
 空港でゆうこの内側に入ったのは、
 逃げたんじゃない、
 ゆうこに力を託すため。
 そして今の消滅でも、
 自分の力を全て、
 分配して・・・」

ゆうこさんが鼻を啜り、顔を上げた。

「・・・僕らは強くなった。
 僕らは、僕らの力で、
 立ち向かうことができる、
 だからもう大丈夫なんだ、
 助けは要らない・・・。
 人質なんか取って悪かったよ、
 スラップスティック嬢は解放する・・・、
 どうか末永く、生き続けてくれ」

「ふざけるな」
< 154 / 202 >

この作品をシェア

pagetop