サグラダ・ファミリア

「き、きもっ」


思わず声を上げると、
「同感」
狐も、頷いた。

よく見ると中年男性の腹を、赤い空気が押して、
こちらに来れないようにしている。

「青い空気はシン、赤い空気は狐?」
「ああ」


二人は実は戦っていたらしい。


「私は?」
「おまえは白い空気、絶対に飛行機に乗って、
 スペインに行くんだって、願ってみろ」
「ん!」

絶対に飛行機に乗って、スペインに行く!

「弱い」
えええ。
「そんな弱い意志じゃ駄目だ」
「そんなこと言われても・・・」
「集中しろ、絶対できるはずなんだよ、
 普通の奴よりずっと楽に」
「えええ?!」
「狐、ゆうこは何の訓練も受けてない、
 責めるな」

「責めてねぇ!特訓だ!」


特訓だったの?


「あっ!」
狐の声。セーラー服の中年男性が、
後ろから巨大な手で掴まれて、持ち上げられた。
そのまま、何かモヤの向こうの、
巨大な口元に、運ばれていく。
「うわ、うわ、うわ」
いかにも気持ち悪くてたまらない、
という声で、
狐が騒ぐので、
思わずシンが振り返った。
危ない!
シンが請負っていた牛が突進して来た。
「シン!」
手を出して、シンの肩を包む。



こっちに来るな



途端、牛が弾けて、玉のようなゴロゴロしたものが、
あたり一面に散らばった。
「今の白い光・・・」
シンが控えめに呟いて、
目が合う。
「信じられないけど、さすが、だね・・・」
怯えたような顔をされ、少しだけ残念になった。
今の、私の力だよね。

・・・喜んでくれないの?



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