サグラダ・ファミリア
動揺して、二度見した。
確かに侍だ。二本刀をさしている。
鋭い目つきに、よく見ると結構なお歳を召しているが、
目が合うとウインクして来たので、まだまだ現役のようだ。
黒澤明の映画に、登場してもおかしくないような風格で、
悠然と構えている。

さぞかし、強いんだろうなぁ。


「龍さん、狐が追って来ました」

どこか、緊張した面持ちで、
白髪が侍に声を掛けた。
狐、と聞いて顔に熱が集まった。

「どこ?!」

思わず身を起こし、窓の外を見た。
後ろ?

車の後ろ窓を覗き込んだが、

狐の姿はなかった。

白髪を見ると、眉間に皺を寄せ、
不安そうに前方を睨んでいる。

狐は車の前に居た。


車は何時の間にか停止していて、
車道の隅。

狐はボンネットに胡坐を掻いて、
赤い気で車の周りをすっかり覆って居た。

何か言っている。


口元、「おい」、「潰すぞ」、
「出せ」、「ゆーこをどうした?」、「出てこい」、
「開けろ」、「ゆーこ!」


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