サグラダ・ファミリア
午前7時。


ロビーには旅の仲間が揃っていた。
聖職者と坊主と、
いかつい黒人ガードマン達。

まだ眠そうな夕子と、

缶コーヒーを片手に、
新聞を読むシン。
さっぱりした知的な私服。

白髪の着ている服は、狐から借りたものだろう、
チンピラ一歩手前。
狐の格好は、甚平だった。


・・・やたら似合っている。



ふと、手を誰かに握られた。
夕子だった。

「ん?」

下を向いている彼女を、
覗き込むよう伺った。

夕子は眉を下げ、少し涙っぽい。


「昨日ゆうこさんが連れ去られて・・・」

「え?」


「私、追いかけて、
 でもぜんぜん追いつけなくて、
 引き返してホテル戻って、
 ・・・やっと、
 やっとシンに知らせたの、
 馬鹿だった!
 もっと早く知らせれば良かった!
 私、何にもできないくせに、頭も回らなくてっ、
 助けなきゃってそれだけ、・・・、
 でも助けられなくて、テンパって、
 ホントっ・・・、役に立たなくて、
 助けが遅れたの、私のせいなの」
「・・・、夕子・・・?
 泣かないで?」

うるうるが最高潮の、夕子の肩を抱く。

「ゆうこさんが、私の、オトリしてるって、
 こと、実感したの昨日、
 私が危険な目に遭わない代わりに、
 ゆうこさんがあんな風に、突然襲われるんだね、
 こんなの不公平だよね?・・・ごめんね・・・!ごめん」

遅い時間、帰って来た私を夕子は寝ずに待っていて、
強く強く抱きしめた。

それから今の今まで、
目を合わせてくれず、
態度もぎこちなかった。

私と同じぐらい、寝ていないのに、
肉体を所持している分、辛いはずなのに、
私より早く起きて部屋から出て行ってしまった夕子。

夕子は、


気にしていたのだ。


私が夕子の代わりに、攫われたこと。
助けようとして、空振ってしまったこと。

無力感と、罪悪感で、酷く苦しんだ夕子。
私と顔を合わせるのが、辛くなる程、
夕子は自分を責めてしまっていたのだ。


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