海までの距離
私が海影にどんな想いを抱いたか、海影に伝えたい。
海影の色気、ジャジーな曲、ライトダウンした時の陰った表情。
…まるで、私が今から綴るのは海影に送るラブレターだ。
どれだけ私が海影に、ハーメルンに魅せられたか?
私はルーズリーフの下の方に、沢山の単語や感情を書き殴った。
それを頭の中でパズルのように繋げる。
図書室はほぼ満席なのに、異質なくらい静か。
私の頭の中には、昨日の音楽が何度もリピートしていた。







海影に初めてメールを送ったのは、その日の夕方。
図書室で何度も何度も推敲して、漸く納得のいくライブレポートが書き上がった。
それを、メールの新規作成画面に全部写して、未送信ファイルに保存した。
全ての工程が終わったところで、私は筆記用具やら教科書やらを鞄に詰め、図書室を出る支度を始める。
さて、ここで弁明すると、何も一日中こんなことをしていた訳じゃない。
ちゃんと英文の問題集はこなしたし、世界史だって勉強した。
勉強の合間にライブレポートを書いたのか、ライブレポートを書く合間に勉強をしたのかは我ながら謎だけど。
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