2番目の恋人
「じゃあ、またね。」
『またね。』なんて無いのに、莉緒はそう言って笑うんだ。
それが莉緒の優しさ。
「あぁ、またな。」
そう言う俺は、最低な人間だ。
――パタン
ゆっくりと閉まったドアをただ見つめた。
「出してください。」
そう伝えると、タクシーはゆっくり動きだした。
もう終わりだ。
十分今日を楽しんだ。
楽しい時間だった……
俺が俺であった、大切な時間だった………
タクシーから下り、我が家に帰りつく。
「皐っ!遅かったわね―っ」
そう言って走り寄ってくるお母さん。
「すみません。ちょっと出かけてたんで。」
「まぁまぁ、とにかくリビングに行きなさい。愛華さんのご両親が来てますから」
「………はい。」
俺は、この家の人形だ。
“皐”という、ただの人形になるんだ。