私と彼の歩く道
「いってぇ~」
男が怯んだ隙に、郁斗は私の手を取ると言った。
「香織、走れ!」
郁斗に引っ張られ、何が何だか分からず、無我夢中で走る。
「い、郁斗。一体どういう事?」
「訳は後で!香織、こっち」
肺が痛いくらい走りながら、路地裏までやって来た。
雑居ビルの間の隙間は、ちょうど死角になっている。
「香織、しばらく我慢してな?」
そう言うと、郁斗は私を抱きしめた。
こうでもしないと、この狭い隙間に、二人で隠れられない。