下田の空[短編]
下田の市街地に入ると、雨がパラパラと落ちてきた。
暗くなりかけた頃に、タクシーは駅に着いた。私は額に当たる雨を拭いつつ、駅へと駆け込んだ。
駅は相変わらず閑散としており、構内は雨が天井に当たる音が響き渡っていた。




母親の言いたかったことが、なんとなくだが解った気がした。
確かに下田では、人と人とが密接な関係にあった。だが、それもただ密接なだけでなかった。排他的、という言葉がふさわしいくらいに他人を虐げ、遠ざけ、白い目で見ていたように思えた。
文明開化の地には、まるで似つかわしくない地であった。




下田駅に着いても、雨は降り続いていた。母は休んで来た職場へのお土産を少し買い、私はお茶のペットボトルを買うと、二人で東京行きの踊り子に乗り込んだ。
空は暗い。もう五時を過ぎた。日の入りも近いな。そんなことを考えながら、私は電車が前進を始めるのを、じっと待っていた。



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