I LOVE YOUが聴きたくて
~ キーン コーン カーン コーン ~


放課後。

綾は、急いでいた。


「綾~!もう帰るのー?」

校舎の階段を、駆け足で降りていく綾に、クラスメイトの相沢 泉が、手すりから身をのりだし、階段の上から顔を覗かせて、下を覗き込む様にしながら、綾に声をかけた。

【綾】の名前に、思わず反応をする、ひとりの男子がいた。
彼は、連れの男子たちと、階段の下で話に盛り上がっていたが、耳に入ってきた【綾】の名前に、反応する。
彼は、友達たちと話で盛り上がりながら、階段上の途中で足を止めた綾に、誰にも気付かれないように、自然に、目を移した。

そんなことを知らない綾は、気付くはずもなく。


足を止め、見上げながら、綾は泉に返事をする。

「うーん」

「何で~?」
泉は、階段を降りてきた。そして、綾に駆け寄る。

「どうしたの?そんなに急いで」

「うーん、ちょっとね」
綾は、わざと、すぐには理由を言わず。

笑顔で、はぐらかすような口調をした綾を見て、聞いてはまずいことではないなと判断をした泉は、

「なぁにー?妙にはぐらかして。ニヤニヤしちゃってさ」
「ニヤニヤしてないわよぉ」
「してるわよぉ。言いなさいよぉ」
「だから~ちょっとねって言ってるじゃん」
「あー!わかった!彼氏?」

ひとりの男子は、友達たちと話に盛り上がっていながらも、綾のことが気になるのか、【彼氏?】の言葉に、内心、反応する。

綾は、思わず、吹き出して笑った。

「違うわよー」

綾は、大笑いする。

【なんだ、違うんだ】
男子は、ひとり、ホッとする。
それは、綾は、知らないことで、知る由もない。


「そんなに笑わなくたって」
「だって、泉、何言い出すのかと思った」
「じゃあ、何?」
「聞きたい?」

綾は、得意げに泉に言った。
「え、まぁ」
「まぁ?」
綾は、わざと、意地悪な目で泉を見る。
「いえ、聞きたい」
「じゃあ、しょうがないなぁ」
そう言って、綾は、自分が何故急いでいるのか、理由を教えた。

「今日、マッシュルームのオープンだよ」

綾は、目を見開いて、輝かせた。

「…………?」

泉は、不思議そうな顔をした。
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