I LOVE YOUが聴きたくて
「おじいさんは、……、あのう、すみません、何とお呼びしたらいいでしょうか」

「おじいさんで構わんよ」

「あ、はい。おじいさんは、どちらにお住まいの方なんですか?この海辺には、よくいらっしゃるんですか?」

老人は、笑って言った。
「そんなにかしこまらんでくれ。友達にでもしゃべるように、気さくにして下されよ。わしも、気さくにさせてもらっておるんだから。絵描きさんがそうしてくれにゃー、わしも、かしこまらにゃいかん」

老人は、目を細めて笑った。

「はい、わかりました」

「うん、よし。ほんで、なんじゃったかのう」

「あっ。おじいさんは、この辺に住んでるの?」

「おう!あそこじゃよ」

そう言って、老人は、海から少し離れた、丘の上に建っている、薄黄色い壁で青い屋根の大きな家を指差して言った。

「へぇーそうなんですか。素敵な家だ」

「いつでも遊びにおいで」

「はい、ありがとうございます。ずっと昔から住んでいるんですか?」

「そうじゃよ。代々の我が家の持ち家じゃ」
「じゃあ、この辺のことは、よく知ってるんですね。この海も、ずっと昔から見てるんだ。いいなぁ~」

「そうじゃなぁ~。途中、子どもの頃に引っ越しをしたのだが、また帰ってきたんじゃ」

「引っ越ししたの?お父さんの転勤とか?」

「まっ、そんなもんじゃ」

「そうなんだぁ」

怜樹は、この海辺が気に入っていたので、おじいさんを羨ましいなと思いながら、海を眺めていた。

「それにしても、絵描きさん、この家は、海に近すぎないかい?まぁ距離としては、充分だと思うが、生活するには、寄せ波が心配じゃないかい?」

「そうですねぇ。ここは、別荘なんです。アトリエなんですよ。だから、まぁ、いいかな、と。なるべく、海の近くに建てたくて」

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