I LOVE YOUが聴きたくて
魅麗は、自分の決めた思いに、苦しむ。

自分で自分の首をしめる思い…。


怜樹に抱きしめられたまま、魅力は、口をつぐむのであった。


そんな魅麗を察したのか、そうではないのか……。

怜樹は、優しく、魅麗を離す。

「そろそろ帰ろうかな。ほんとはさ、お店の中もゆっくり見たかったんだけど、もう時間がなくなっちゃったから、そろそろ帰るね」

そう言って、怜樹は、持ってきていた、大きくて、いかにも重そうな絵の道具を、両手で抱えた。

それを見て、本当はここで絵を描こうと思っていたことを知る。
時間が無いなら、わざわざ持ってきてはいなかったはず。

魅麗は、思っていた。

【普通なら、私、怜樹に見せたくて、中も見てって言うはず。でも、私が言わないから、怜樹、遠慮をしたのよね、きっと】

魅麗は、自分のふがいなさを痛感した。

「じゃあね」

そう言って、怜樹は、背を向けた。

急に、魅麗の心に、虚しさを感じた。

【もう、会えないかもね】


いつの間にか、太陽が夕日に変わっていた。

夕日に染まり、遠くなる怜樹の背中が、愛しかった。

でも、魅麗は、「待って」とは、言わなかった。

言えなかった。

涙が出そうだった。


「あ!」


背を向けたまま、怜樹が言った。

魅麗は、どうしたのだろうと思いながら、怜樹の背中を見つめる。

すると、怜樹は振り返った。

「ありがとう」

「え?」

「宇宙の絵。飾ってくれたんだね。さっき、窓から見えたんだよ。ありがとう」

「あぁ。うん」

魅麗は、波ぐむのを堪えながら微笑んだ。

「じゃあね」

怜樹は、再び、背を向けて歩きだした。

遠くなる背中に、魅麗は叫んだ。

「ずっと大事にしてるよ。これからも大切にするから。私の宝物だから」

怜樹は、振り向いた。

そして、

「またね」

と言った。


怜樹は車に乗り、見えなくなっていった。

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