頭痛
 会社の執務室で、秋史はひとり、自分だけの席に着いていた。

 ズキン、ズキンと、静かに脈動し、頭痛が始まった。


 嫌な予感がする。
 また、何かが起きてしまうのか?

 言いようのない衝動と興奮が、秋史を襲う。

 冷静でいられるように、何度も何度も自分に努めて言い聞かせた。


 秋史は週末に、彼女をドライブに誘うことにした。

 携帯電話を操作し、耳に押し当てる。

 突然の誘いにも係わらず、彼女は誘いに乗った。


「ええ、行くわ……」

 彼女は短く、確かにそう言った。

 秋史はその返事を受け取ると、迎えに行く事だけを伝えて、電話を切った。

 秋史の隠し切れなかった声の雰囲気に反応したのか、電話の彼女の声は、決して弾んではいなかった。

< 25 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop