街角トレイン



「有名な作詞家がいるから
その人に明日会ってみない?」
「は…はい…?」
「それじゃあ決まりね!
忙しくなるわよ〜」



なんだかあっという間に
デビューが決まった…?



まだあんまりよくわかんない…。



でも…これで…
よかった…のかな?



+--+--+--+--+--+--+--+



「お父さん、調子どう?」
「いつも通り、いい調子だぞ」



嘘。



お医者さんも言ってたけど
もう薬の副作用が激しくて
お父さんは苦しんでるって。



でも…お父さんは
私のために嘘ついてくれてる。



本音、言ってほしかったな。



「お父さん、聞いて?
私…歌手デビューするかもしれないの」
「本当か!?危ない会社じゃ
ないだろうな!?」
「大丈夫だよ。心配しないで」
「気を付けるんだぞ」
「わかってる」



お父さんはいつも私の心配ばかり。



少しは自分のことも
考えてほしいって思う。



「…花菜も。この世からいなくなる前に
アイドルになるってきかなかったな」
「花菜?」
「ララのお母さんだよ」



初めてお父さんの口から
お母さんの話を聞いた。



花菜…っていう名前なんだ。
楠美…花菜。



「花菜も、喜んでるだろうな」
「なんで?」
「自分の娘が夢だった歌手になるんだ。
喜んで当然だろ?
だから、ララ。
お母さんのためにも
…お父さんのためにも
最後までちゃんとやりきるんだぞ。
何があっても…最後まで」
「何よ…急に改まって」
「特に理由はないさ。
じゃあララ、また明日な」



"また明日"
この言葉の意味の重みを
私は後になってから…






知った。






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