金烏玉兎
さよなら、と呟く貴方の手を。


お正月は淡々と過ぎて行った。

私の実家は聖や静綺や照大みたいに地方を出たりはしない。

大都会の真ん中にあるそのビルへ行くのには、少し躊躇する。


お母さんがお雑煮を作っている後ろ姿を見て、家に帰ってきたんだと心が落ち着く。

…それにしても、お母さん…

「太った…?」

くるり、と素早く回ったお母さん。

「桜嘉!帰ってきたら、『ただいま』でしょう!?いきなり失礼なことを親に向かって言わないのよ!」

どこかで似た台詞を聞いた。

「た、ただいま。」



< 133 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop