金烏玉兎
烏は太陽へ。 兎は月へ。






手術中のランプが点いている。

すぐ傍の椅子に座る血塗れの二人。

私と照大。

最初に電話したのが照大で、パニックになった私の説明を聞いて来てくれた。


「桜嘉もどっかやられたのか?」


私の手や服についている血は全部聖のもの。

照大は聖を運ぶのを手伝ってくれた。

今更のように小刻みに震える指先を、優しく包み込んでくれる。

二人とも俯いたまま、涙も会話も無くて、時間だけが流れていく。

靴音がして、視線をあげると東仲さんがいた。



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