金烏玉兎


その手を両手で握って、目を閉じる。


「桜嘉さん、人は簡単に死にませんよ。
マリア様にお願いしましょう。聖さんが信じていらっしゃったのはマリア様でした。」


握られた手は、暖かい。

そういえば冬なんだ。


「…聖が…居なくなったら、」


悪夢だと思いたい。


「悲しむ人が居るのに…。」


目の縁から涙が零れた。

理由は分からない。

恐怖なのか、悲しみなのか。


でも、人はこうしてでしか、心の重みを消すことが出来ない。



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