りんごあめ
「あっ!アレ、食べるっ!」


 いい食べ物の屋台を見つけたらしく、嬉しそうにその屋台へと走っていく樹里。

 “全く……しょうがないなぁ”と半分呆れてながらも、私は樹里の後を追う。


「おばあさん!1つ下さい!」


 樹里が走ってやってきたのは、林檎飴を売っている屋台。


「イッヒッヒッヒ。200円だよ」

「はいっ、200円っ」


 不気味な笑いをしている白髪のおばあさんから、樹里は真っ赤な林檎飴を受け取った。


「林檎飴かぁ。そういや私、ここ数年食べてないなぁ」

「むぅ……あげないよ?」

「いや……だれも欲しいなんて言ってないじゃない」

「……っぷ。あははっ、杏奈の怒った顔、面白いっ」

「あー!からかったなぁ?!」


 私は樹里に怒ってみせるけど、樹里は笑ったまんま。

 まぁ……これは学校にいる時とあまり変わらない光景なので、本当は私、そこまで怒ってないんだけど。


「この林檎飴、あまーいっ」


 語尾にハートがついているような、幸せそうにそう言った樹里を見て、私は微笑んだ。

 なんか、子供のいる親の気分。樹里に言ったら怒るから、絶対に言わないけど。
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