私の大切なもの

オトコって

「美紀。就職きまった?美紀ちじゃ、就職しなくても大丈夫だよね。それとも芸能人でもなる?」

大学4年の夏ともなれば、当然のごとく就職するものは行き先が決まっている時期であるが美紀は何にも決まっていなかった。
父親の会社の接待に顔出しするだけが自分の役割のように感じていた美紀にとって就職など考えも及ばなかったのである。
もちろん夜の接待ともなると、女を武器とする内容もあり、普通なら躊躇する接待も美紀はなんなくこなしていた。
これには、悲しいそして切ない過去・経験が彼女をそう変えてしまったに他ならない。それは後日語られることになる。

「そうだね。座っているだけで、あと夜は豪華なディナーでもあれば」
「やだー美紀。どこかのお姫さんじゃあるまいしーww」
「だねー。」

美紀は知らずに大きなため息をついていた。
『むなしい』
最近よく、そのコトバに悩まされる美紀だった。
『なんか初めないとだめかなー。はぁー。』

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「美紀。今日はのってないねー。お酒も進んでないようだし」
「大橋さん。こんばんは。ちょっとね仕事したいなーなんて。ははは」
「ボクのお嫁さんになりなよー。仕事しなくてもいいよ」
「えー。それはねー。なんか馬鹿になりたくないというか」
「美紀ちゃん頭いいじゃん。美人だしさー」
「あは。ありがとーw」

また社交辞令なところで済ませて、その場を去った。
『一度、夜を共にしただけで、この懐きよう。オトコは信用できないわ』
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