zinma Ⅲ



ルシールが気がついたときにはもうすでにシギの腕の中におさまっていた。

シギは右手でルシールの肩を抱き、左手でルシールの頭を優しく自分の胸に当てる。


ルシールが目を見開くが、頭の上からシギの声が響いてくる。


「……それだけじゃないんじゃないか?」


それにまた一筋涙がこぼれる。



「……たしかに…ルシールは2人きりの姉妹の姉だよ。

だけど、それでもまだ18にもなってない女の子だ。

宿を経営して、花を育てて。
たしかにしっかりしなくちゃいけないかもしれないけど、時々力を抜くのも必要だと思う。」



ひとつひとつシギが言葉を紡ぐたびに、ルシールの瞳からぽろぽろと涙がこぼれる。


「家族がいなくなって、悲しくないわけないだろ。」


その言葉にルシールがシギの背中の服を握る。


「……う…………」



ルシールは嗚咽をおさえながら、涙をぽろぽろと流す。

シギの胸に顔をうずめると、シギはルシールの頭を優しくなで、抱く腕に力をこめてくれた。


まるでルシールの泣き顔がだれにも見られないように守るように。


「いままで耐えた分、泣いていいから。」


そのシギの言葉に、さらに涙が溢れるのを感じながら、ルシールはシギにしがみついた。











薄く目を開くと、もう夕方なのか、オレンジ色の淡い光が目に飛び込んできた。


ゆっくりとまぶたを持ち上げ、前を見ると、目の前にはトクルーナの花と、きれいなシギの顔があった。

それに思わず飛び起きそうになるが、ルシールの肩にシギの腕が乗っていることに気づき、とどまる。


どうやら大泣きしたあと、疲れてそのまま眠ってしまったらしい。



シギは小さな寝息をたてて寝ている。

その少年らしい顔に小さく笑ってから、おそるおそるシギの前髪に触る。


さらさらと流れる紺色の髪を、どかす。



その瞬間、

「ん………」

と小さく声をあげて、シギが目を開き始める。


「ふふ。赤ちゃんみたいですね、シギさん。
おはようございます。」


と言うと、シギはルシールの顔を寝ぼけた目でとらる。




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