一番近くに君が居る


そして聞こえて来た階段を駆け上がる足音。二人はそれが誰のものかすぐに分かった。


「ココ!」


真っ先に直哉は名前を呼んだ。それに立ち上がり返事をするココと、入れ替わるようにそっと階段を下り始めた長田。

そんな長田を「あ、長田君!」と、ココは呼び止める。


「今日は本当にありがとう!また学校でね!」


流石に長田でも見慣れて来たココの笑顔。見慣れるくらい、ココはいつも笑顔を見せる。そんな彼女の笑顔を向けられる気持ちが、今日分かった気がする。


「あぁ、こちらこそ」


そう言って長田は一人、階段を下りていった。その後ろ姿をココは見えなくなるまで見つめていた。


…そんなココは、自分に向けられる直哉の視線の意味に気がつかない。

直哉が自分をどんな気持ちで見つめているのか、自分に対してどんな想いを直哉が抱いているのか、今までだって考えたことも無かったのかもしれない。でも、今日は今までともまた違う。


「ーーココ、話がある」


直哉はもう、決心していた。



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