白い翼と…甘い香り

■あと1日■


最後の、1日になった…

私は明日の朝、飛行機に乗る。


アメリカへ引っ越すと
言われた日から今日まで

主人は本当に忙しそうで
滅多に帰って来なかった。

お得意様へ挨拶に回ったり
残していく仕事の段取りとか

時間が足りないくらいの
忙しさだったようで
荷物の準備はすべて私に任せ
帰らない日が続いた。

結局、仕事で疲れたり
遅くなったりすれば

少し遠い自宅へ帰るよりも
仕事場のマンションが気兼ねせずに
くつろげるって事なんだろう。

そんなもんだろうね…


今夜は最後に
事務所のメンバーと送別会で
明日の朝は別々に空港まで
行く事になっていた。

大きな荷物は発送済みだし
小さな手荷物だけで行けばいい




和也は
あの旅行に行った日からずっと
口には出さなかったけど

私の態度が何かを隠してると
疑ってるみたいだった。


あやふやに誤魔化しながら
本当の事を告げられずに
今日まで時間が過ぎて

思い出や記憶は
たくさん増えたけど

もう明日からは
増える事がない。


主人が忙しいおかげで
毎日のように会えたけど

少し気まずい感情を持ったまま
嬉しさよりも切なさを
積み上げながら会ってる
そんな、毎日だった。


明日までの思い出を
作ろうとしている私と

楽しそうに1ヶ月後の
計画を練る和也と

少しだけ
温度差があったね。



今夜、和也に会えば

最後になる。


笑って、「さよなら」って

言えるかな…


< 196 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop