歩く光の彼方には。

02 凍えぬ指に呪う唇。

「神の力《アガペー》の反応が近い…」


誰も来ないような体育館の倉庫裏に、一人少女が佇んでいた。

少女ーーー先程いのりとすれ違った少女、名は次原由良ーーーは、妙に年齢に合わぬ大人びた硬い声色でそう呟くなり有名私立中学校のブレザーの制服の胸元から、恐らくは校則違反であるものを取り出す。

由良の手のひらにあるのは、ひとつだけ丸くカットされた宝石のついたネックレスだった。その宝石は、恐らくはアメジストだろう。太陽の光を浴びて、神秘的に輝いていた。

由良はアメジストの輝きを暫し見つめ、それから冷たい声で言葉を紡ぐ。


「神の力《アガペー》よ、我に答えよ。

我は《言語の使い手》、《究極》に至る資格を持つもの也。

彼の者の《アガペー》は何者なりや?」


一瞬の静寂の後、アメジストから強い光が発せられる。

どこからか低い男の声が聞こえてきた。


【《言語の使い手》よ、神の力《アガペー》が答えよう。

彼の者は《絶望の使い手》古賀いのり。

彼の者こそ最も《究極》に近き使い手也】


その言葉に由良ははっとしたように目を見開く。それから、長く深いため息を吐いて空を仰いだ。

「……古賀、いのり……」
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