『若恋』榊の恋【完】



「ひかるちゃんに渡したいものがあるんです」

「わたしに?」

「これを」


ひかるちゃんの左手を取り迷わずふたつの指輪をはめた。



「指輪?」

「ダメですか?」

「だ、ダメなんて…そんなことない。すごく。すごい嬉しい」



今にも泣き出しそうなひかるちゃんをそっと抱き寄せた。


「これはわたしのです。ひかるちゃんから指にはめてもらえますか?」

ポケットから取り出してひかるちゃんの指輪より大きいのを握らせた。



「来年の4月までの約束です」



「榊さん!」



ひかるちゃんが指輪を握ったまま胸に顔を埋めて泣き出した。


「泣かないでください。ひかるちゃん…」

「さか、きさん」

「泣かれると弱いんです」



しがみつく指先までいとおしい。

「ひかるちゃん」


名を呼べば一途な瞳が見上げてくる。




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