『若恋』榊の恋【完】



「いい所でしょう」

「うん、お湯もきれい。さらりとしてて肌もスベスベになる」

「ここは昔、鹿が矢傷を治しに入りにきたお湯だそうです」

「へええ」


お湯を浴びる音と虫の声が聞こえる。



「わたしは先に出ますので」

ひかるちゃんが隣にいて裸で湯を浴びてると思うと逆上せそうだった。


「わたしも出ます」

ザバッとひかるちゃんが上がる音がした。


用意された浴衣に着替え、離れに一緒に手を繋いで歩いていく。

髪を結ったひかるちゃんの後ろ髪から滴が落ちて浴衣に吸い込まれる。


「まだ落ちて来てますよ」

「あれ?ホントだ」


部屋に戻るとひかるちゃんの髪をほどいてくしけずる。

豊かな黒髪がしっとりと指に触れる。

いい香りがしてドキリとした。



「…ひかるちゃん」



後ろからそっと抱き締める。



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