『若恋』榊の恋【完】



破り捨てたかったがひかるの居場所の手がかりはこれしかない。

一呼吸置いて白い封筒を千切り、中から紙を抜き出して読んだ。



「………」

「場所と…刀?」

「………」



場所指定。

たぶんひかるを拐ったヤツがここに書かれた場所に来いと告げてるんだろう。


「なんで刀持ってこいなんだ?」

若が首を傾げる。


「……榊、」

「……はい」


頭の芯は冷えていた。

前のように後先考えずに走ることはない。

頭の中の警鐘は鳴らない。

ひかるはまだ無事だ。



「ひとりで来いと言ってるな。どうする?相手がわからない限り動くのは危険だが」

「ひとりで来いと言ってるのでわたしひとりで行きます」

「あの一振りを持ってか?」

「ええ」


ここに。
大神に来た頃に組長から封印されたまま渡されたものがある。

それを持って出向く。


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