『若恋』榊の恋【完】


「みんな良い人たちだね」

「そうですね。信頼のおける大切な仲間です」


嬉しそうに声を弾ませるひかるを見たら可愛くてたまらない。

後ろから小さなその背中をだきよせた。


「誰かが見てるかも、」

「そんな野暮な人いませんよ」

「お姉ちゃんくるかも」

「来ませんよ。若がりおさんを離すはずないですから」


瞳を泳がすひかるにキスをひとつ落とした。



「函館までの切符取りましたので、明日、発ちましょう」

「え?明日?」

驚いて振り向いたひかるに更に続けた。


「話をしなければならないことがあるので」

「それってなに?」

「内緒です」



電話だと伝えきれない。

ひかるの元気な姿をみせなければ。

信じて預けてくれたひかるの両親に傷を負わせてしまったことを告げなければ。


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