『若恋』榊の恋【完】


全身に一気に寒気が走った。



「極道の息子の恋人役を?」

間違われてひかるが連れていかれたのが極道の家。


「電話番号はわかるんですね?家は?」

「わかります」

「では、電話してから行きましょう。案内してください」



ひかるの姿が見えなくなって1時間。
お義父さん、お義母さんにはゆっくりしていくのでと心配しないようにと連絡入れたが、いなくなったことは話せなかった。

先日に手首に傷を負わせたばかりなのに、またトラブルに巻き込まれたらしいとは言えなかった。



彼女を車の後部座席に座らせて電話を掛けると、繋がらず呼び出しが続いた。


「……でない」


携帯が繋がらない。


「それでは家に向かいましょう」


恋人のフリをするという役目の彼女と間違われただけならひかるの命の危険はないだろう。



< 362 / 440 >

この作品をシェア

pagetop