『若恋』榊の恋【完】
タオルでぐるぐる巻きにした左手をそっと解いていく。
ひとすじの赤い線が現れ、まだ血は滲むものの深手ではなかった。
「ひかるさん、傷は思ったより浅いから大丈夫よ」
どんなにひかるがショックを受けていたか、彼女はその痛みを理解していた。
ひかるが自分を責めたりしないようにと気を配る。
「ほう?」
処置されている親父も口の端を上げた。
傷口を真水で洗い流しテキバキと治療を行う。
もちろん声がけも忘れない。
「包帯…きつくないですか?」
「丁度いい」
パタンと救急箱を閉じた時には親父は笑っていた。
「元太、おまえには勿体無いオンナだな。儂が若かったら拐ってでも傍に置いて置くのにな」
「……親父、」
元太は困り顔だ。
「そこの。榊……と、言ったか?あんたらにも迷惑掛けたな。家のバカ息子が悪知恵を働かせようとしてこのざまだ」