『若恋』榊の恋【完】




「榊、用意は出来たか?」



若が紋付き袴姿で迎えに来た。

隣には玲央坊っちゃんを抱いて薄いさくら色留め袖を着たりおさんが満面の笑顔で控えている。


「榊さん、すっごく素敵だよ!」


りおさんが笑ってる。



「向こうの控え室にいるひかるの白無垢姿もすごく可愛らしかったんだから」

「ああ、似合ってたな。榊は見たか?」


若もひかるの花嫁姿を思い出して口の端を上げた。

「いえ、わたしは式までは、」

「そうか。あの可愛らしい姿を見れば泣けるぞ」


本当は一番に見たかった。
けれども姿を見たら離れられなくなってしまう。


「わたしの時は結婚式じゃなくて大神物産のパーティーの御披露目だったしね」

若とりおさんはパーティーで振り袖姿を披露し結婚の報告だった。


「身内だけで式をやりたいとひかるの希望なんです」

大袈裟な式ではなく、身内だけでやりたいと。

そしてできるならば、あの山里の旅館でやりたいと。


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