愛し方を知らない少女の歪んだ愛
わたしの態度に、有希が困ったような顔をする。
そりゃそうだろう。
誰もわたしの気持ちなんて知るはずがないのだから、わたしがどうして泣いているのか分かるはずない。

「美沙? あれ、わたしなにか悪いことした……?」
「おい、美沙。どうしたんだよ?」

降り掛かる声に、わたしの涙は増す。

悔しい。
お兄ちゃんが盗られたのが悔しい。

だけどその盗った人物が、自分の友達なんて……。

「……ごめ、ん。ちょっと、驚い、て……」

涙がやっと止まる。
わたしは鼻をすすりながらそう答えた。
いま二人の顔を見てしまったら、また泣いてしまうだろう。

「気にしないで……?」

わたしはそう言うが早いか立ち上がり、自分の部屋に直進した。
その際にちらりと見えた困惑した表情の有希に、心が痛む。

わたしは自分の部屋に飛び込むと、ベッドにダイブした。
< 25 / 58 >

この作品をシェア

pagetop